「ビタミンは体に必要」と聞いたことがある人は多いと思います。
しかし、

  • ビタミンはなぜ必要なの?
  • ビタミンA・B・C・D……は何が違うの?
  • ビタミンBだけ、なぜたくさん種類があるの?
  • 水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンは何が違うの?

と聞かれると、少し難しく感じるかもしれません。
実はビタミンは、すべてが同じ仕事をしているわけではありません。
あるビタミンはエネルギー代謝を助け、あるビタミンは細胞を酸化から守り、また別のビタミンは視覚や血液凝固、カルシウムの調節など、ビタミンの機能は実に様々です。
まずは、ビタミンを「体という都市を支えるスタッフ」と考えてみましょう。すると…

  • ビタミンB群は、エネルギーを生み出したり必要な物質を作ったりする工場の作業員。
  • ビタミンCやEは、細胞を酸化によるダメージから守る警察官や消防士。
  • ビタミンAは、光を感じるセンサー。
  • ビタミンDは、体内のカルシウム量を調節する管理者。
  • ビタミンKは、傷ついた血管からの出血を止める仕組みを支える修理スタッフ。

このように考えると、13種類のビタミンにはそれぞれ違った役割があることが見えてきます。
この記事では、細かな化学反応を覚えることよりも、「どのビタミンが、体の中でどのような役割を担当しているのか」という全体像をつかむことを目標にします。

そもそもビタミンとは?

私たちは食事から、糖質、脂質、タンパク質、無機質、ビタミンなどの栄養素を取り入れています。
この中には、生命を維持するために必要なのに、体内では十分な量を作ることができない物質があります。
ビタミンとは正常な生命活動を維持するために必要で、原則として体内だけでは必要量を十分にまかなえないため、食事などから補う必要がある微量の有機化合物のことです。
ビタミンには、大まかに次の特徴があります。

  • 正常な生命活動を維持するために必要
  • 必要量を体内だけでは十分にまかなえない
  • 有機化合物である
  • 必要量は非常に少ない

ここで重要なのは、「ビタミン」という名前が、特定の化学構造を表しているわけではないということです。
「体に少量必要で、食事などから補う必要がある」という栄養学的な共通点によってまとめられたグループなので、ビタミンAとビタミンCでは構造も働きも大きく異なります。
ビタミンの中には別な物質から体内で変換されるものがあります。この時の変換のもととなる物質(前駆体)をプロビタミンと呼びます。

※構造式を覚える必要はありません。「ビタミン」と呼ばれる物質でも化学構造は非常に多様であること、また一部のビタミンには体内でビタミンへ変換される前駆体があることを確認してみてください。

ビタミンは全部で13種類

現在、ヒトに必要なビタミンとして13種類が知られています。
大きく分けると、

  • ビタミンA
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • ビタミンK

です。「6種類しかないのでは?」と思うかもしれません。
実は、ビタミンB群には8種類あります。

  • B1
  • B2
  • B3(ナイアシン)
  • B5(パントテン酸)
  • B6
  • B7(ビオチン)
  • B9(葉酸)
  • B12

これらを合わせると13種類になります。

13種類のビタミンは何をしている?

細かな反応を覚える前に、まず役割で整理してみましょう。

ビタミンB群:代謝を進めるサポート役

ビタミンB群の多くは、体内の化学反応を助ける補酵素として働きます。
私たちの体では、糖質や脂質などからエネルギーを取り出したり、アミノ酸や脂質など必要な物質を作ったりするために、数多くの化学反応が行われています。
しかし酵素だけでは進みにくい反応もあります。
そこで、酵素の働きを助けるのが補酵素です。
ビタミンB群は、いわば体内にある工場で働く作業員のような存在です。
それぞれ担当する作業は異なりますが、エネルギー代謝やさまざまな物質の合成を支えています。

ビタミンC・E:細胞を酸化から守る

私たちの体内では、代謝の過程などで反応性の高い分子が生じることがあります。
これらが過剰に反応すると、脂質などの生体成分を傷つけてしまいます。このような反応の多くは酸化反応です。ビタミンCやビタミンEは、このような酸化反応を抑える抗酸化作用を持っています。特にビタミンEは脂質の多い場所で働き、ビタミンCは水に溶ける環境で働きます。
ビタミン E は脂質に溶ける性質を持つため、細胞膜上やリポタンパク質など脂質がたくさんある場所で脂質の酸化を防いでいます。例えるなら、火が燃え広がらないように消火する消防士のような役割です。
ビタミン C は水に溶ける性質を持ちますので、体中を循環しながら酸化反応を引き起こす物質を取り締まる警察官のような役割を担っています。
さらに、両者は互いに関係しながら抗酸化作用を支えています。

ビタミンA:光を感じる仕組みに必要

ビタミンAの重要な役割の一つが視覚です。
私たちの眼では、光を受け取る仕組みにビタミンA由来の分子が利用されています。
光を受けると分子の形が変化し、それがきっかけとなって神経へ情報が伝えられます。
そのためビタミンAが不足すると、暗い場所で見えにくくなるなど視覚に影響が現れることがあります。
ビタミンAは、体内の光センサーを構成する部品の一つと考えると分かりやすいでしょう。

ビタミンD:カルシウムの調節を助ける

カルシウムは骨の材料というだけではなく、神経や筋肉などの働きにも重要です。
そのため、血液中のカルシウム濃度は適切な範囲に保つ必要があります。
ビタミンDは、カルシウムの吸収や体内での利用を調節することに関わっています。
体内のカルシウム量を調節する管理者のような役割です。

ビタミンK:血液を固める仕組みを支える

けがをして血管が傷つくと、私たちの体では出血を止める仕組みが働きます。
この血液凝固に必要なタンパク質が正常に働くために重要なのがビタミンKです。
道路が壊れたときに修理して交通を回復させるように、血管が傷ついたときの修復システムを支えています。

ビタミンには「水溶性」と「脂溶性」がある

13種類のビタミンは、働きだけでなく水に溶けやすいか、脂質に溶けやすいかによっても分類できます。この特徴は吸収の仕方や機能の仕方に影響する大切な物性です。

脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミンは、
A・D・E・K
の4種類です。
脂質に溶けやすいため、消化・吸収や体内での運ばれ方にも脂質との関係があります。

水溶性ビタミン

水溶性ビタミンは、
ビタミンB群とビタミンC
です。
B群が8種類、Cが1種類なので、合計9種類あります。

つまり13種類のビタミンは、
脂溶性4種類+水溶性9種類=13種類
と整理できます。

体の中で作られてから働くビタミンもある

食べ物に含まれる物質が、そのままビタミンとして働くとは限りません。
体内で変換されてからビタミンとして利用される物質もあります。
このようなビタミンの前駆体をプロビタミンと呼びます。
代表例がカロテノイドです。
α-カロテンや β-カロテンなどの一部は体内で変換され、ビタミン A として利用されます。
また、皮膚では7-デヒドロコレステロールから、紫外線の作用を受けて構造変化を起こし、ビタミン D が作られます。ビタミン D が太陽光で合成されるといわれるゆえんです。
このように「食べ物からそのまま摂取する」だけではなく、体内で変換されて利用される場合もあります。

まずは13種類の「担当」を理解しよう

ビタミンについて学び始めると、
FAD、NAD、CoA、レチナール、レチノイン酸、カルシフェロール……
と、多くの名前が登場します。
しかし最初からすべて覚える必要はありません。
まずは、

  • B群:代謝を助ける
  • C・E:酸化から守る
  • A:視覚などに関わる
  • D:カルシウム調節に関わる
  • K:血液凝固に関わる

という大きな地図を頭の中に作ってください。
そのうえで、それぞれのビタミンが「具体的にどのような反応を助けているのか」を見ていくと、各論を理解しやすくなります。

【コラム】ビタミンの発見の経緯は?

ビタミンの発見は脚気研究と深いつながりがあります。脚気はビタミン不足によって引き起こされる病気です。ニワトリを使った実験で米ぬかに脚気を防止できることが見出されました。この事実から生命に必要な物質が不足することが脚気や壊血病のような一部の病態を引き起こすことが発見され、「生命に不可欠な」という意味の “vital” と有機分子の中の窒素を含む基である “amine” を組み合わせて「ビタミン(vitamin)」と命名されました(最初ビタミンがアミン類だと考えられていたことからこのように命名されましたが、実際にはすべてがアミン類であるというわけではありません)。
このような研究の中で、ビタミンは脂溶性因子(バターや魚油などに由来)と水溶性因子に分けられ、それぞれビタミン A とビタミン B とされました。その後、ビタミン B(米ぬかや酵母などに由来)には多数の物質が含まれていることがわかり、ビタミンB1、ビタミンB2 … と命名されていきました(その後別な分子と同じであることがわかったものやビタミンとは呼べないものなどが欠番となっています)。
その後、様々な物質や経緯からビタミンが同定され、C、D、E… と同定されていきました。

もっと詳しく知りたい方へ

この記事では、ビタミン13種類の全体像を紹介しました。
ビタミンの概要のより生化学的な解説や各ビタミンが働く詳しい仕組みについては、個別の記事で解説しています。
→ ビタミンの概要を詳しく見る(👉こちら
→ ビタミンAの働きを詳しく見る(👉こちら
→ ビタミンB群の内エネルギー代謝に関与するものの働きを詳しく見る(👉こちら
→ ビタミンB群の内物質の合成・分解に関与するものの働きを詳しく見る(👉こちら
→ ビタミンC・Eの抗酸化作用を詳しく見る(👉こちら
→ ビタミンDの働きを詳しく見る(👉こちら
→ ビタミンKの働きを詳しく見る(👉こちら

参考文献

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