病原体に対する自然免疫は、国家の防衛システムに例えると理解しやすくなります。
 病原体が侵入すると、自然免疫はまず病原体に共通する特徴的な構造である病原体関連分子パターン(Pathogen-associated molecular patterns; PAMPs)や、病原体による傷害を受けた細胞から放出される傷害関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)を認識します。国家の防衛システムに例えると、PAMPsは敵軍が共通して掲げる旗印、DAMPsは攻撃によって発生した警報や火災の煙に相当します。PRR(Pattern recognition receptor)は双眼鏡のような役割を担います。免疫細胞はPRRを介してPAMPsやDAMPsを監視し、異常を検知すると防御反応を開始します。マクロファージは侵入してきた病原体を認識して、貪食、サイトカインを介した免疫細胞の活性化、ケモカインによる免疫細胞の動員などを行う巡回と現場指揮官を担う細胞です。一方で好中球などの貪食細胞はケモカインによる動員を受けて最前線で戦う前線部隊です。樹状細胞は抗原提示に特化した細胞で、取り込んだ抗原をB細胞やT細胞へ抗原提示して獲得免疫を誘導するなど免疫の司令部との連絡役として機能します。補体は病原体を認識して自律的に攻撃するドローン部隊のようです。病原体を殺傷するとともにオプソニン化効果を通じて貪食機能を亢進します。ウイルスや一部の微生物は細胞に感染するものもいます。このような乗っ取り行為を受けた細胞はNK細胞が特殊部隊のように認識してアポトーシスを誘導し、殺傷します。
 このように自然免疫では、各細胞や補体がそれぞれ異なる役割を担いながら連携し、病原体を効率よく排除するとともに、樹状細胞などを介して獲得免疫へ情報を伝えることで、生体全体の防御を支えています。

免疫とは?

 ウイルスや細菌などの異物から生体を守るシステムのことを免疫(Immunity)といいます。この言葉はラテン語の immunitas(ローマ帝国の元老院に属する貴族の法的訴追からの免除特権)に由来し、感染症から免れる(防御される)ことを意味しています。免疫は様々な細胞や分子によって支えられた複雑なシステムであり、このシステムを免疫系(immune system)といいます。また、外来性の異物に出会ったときに免疫系が起こす応答を免疫応答(immune response)といいます。
 免疫応答は外来の異物に対する応答と紹介しましたが、実際には自己を構成する分子(がん細胞由来の分子や自己免疫応答など)に対しても応答する場合があります。このため、より広義には免疫応答は「微生物および外来性または異常と認識される分子に対する反応」と定義できます。一般に免疫学とはこの広義の免疫応答に対して理解する学問とされています。

免疫系の種類

 免疫系には大きく分けて自然免疫(innate immunity, 先天性免疫; natural immunity, native immunity ともいう)と獲得免疫(acquired immunity, 特異的免疫; specific immunity, 適応免疫; adaptive immunity ともいう)に分けられます。自然免疫は感染後早期から応答する生体防御機構で、危険シグナル(danger signal)を認識して機能します。危険シグナルには微生物などに共通してみられる分子パターン(PAMPs)と損傷を受けた宿主細胞から放出される分子パターン(DAMPs)があります。一方で獲得免疫では、ある種の病原体に暴露されると刺激を受け、再度同じ病原体に感染するとより強く、素早く応答することが可能となります。このタイプの免疫応答では初回の感染によってその感染に特化した免疫を獲得し、記憶を保持することで実現されています。このように免疫応答を誘導する異物のことを抗原(antigen)と呼びます。
 自然免疫には上皮バリアなどの物理的・化学的バリアや補体、レクチンなどの分泌タンパク質による防御機構、貪食細胞(マクロファージや好中球など)や樹状細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マスト細胞などの細胞による防御機構が存在します。一方で獲得免疫は腸管や呼吸器、生殖器などの抗体やリンパ球によって機能する防御機構で、粘膜上皮細胞の間に存在するリンパ球(上皮間リンパ球)も関与しています(図 1)。
 自然免疫と獲得免疫はそれぞれ独立した機構ではありません。自然免疫は獲得免疫を刺激して獲得免疫の機能を亢進します。一方で、獲得免疫の作用により自然免疫の機能が増強され、自然免疫はより強く、効果的に働くことができます。

図 1. 自然免疫と獲得免疫
 自然免疫獲得免疫
特徴認識分子微生物に特有の分子パターン(PAMPs) 傷害を受けた細胞で産生される分子(DAMPs)様々な微生物抗原・非微生物抗原
多様性低い極めて高い
記憶限定的あり
自己応答性ありあり
構成要素細胞性・化学的バリア皮膚、粘膜上皮、抗菌分子など上皮間リンパ球、上皮表面の抗体
分泌タンパク質補体、レクチンなど抗体
細胞貪食細胞(好中球・マクロファージ) 樹状細胞 NK細胞 マスト細胞 その他の自然リンパ球T細胞 B細胞
表 1. 自然免疫と獲得免疫の特徴

自然免疫(innate immunity)

自然免疫の概要

 自然免疫は大きく分けて、①上皮バリア、粘膜上皮などの機械的・化学的バリア、②(マクロファージ、好中球などの)貪食細胞、樹状細胞、NK細胞、マスト細胞、自然リンパ球などの細胞が介在する機構、③補体、炎症性メディエーター(ヒスタミン、プロスタグランジン、各種サイトカインなど)によって構成されています。

自然免疫の構成要素

 機械的・化学的バリアでは上皮細胞などが物理的に病原体の侵入を阻害したり、粘膜中の抗菌物質が細菌などの殺菌や侵入阻害を担ったりしています(図 2)。
 細胞性自然免疫ではマクロファージや好中球、樹状細胞などが貪食することにより異物を排除しています。これらの細胞は異物排除とともに獲得免疫で機能するT細胞へ抗原を提示してもおり、自然免疫としての機能のみならず獲得免疫への橋渡しの役割も果たしています。マスト細胞は細胞内の顆粒にヒスタミンなどの炎症性メディエーターを保持しており、異物の侵入を感知することで脱顆粒(顆粒が細胞膜と融合して内部の炎症性メディエーターを放出する現象)を経て炎症性メディエーターを放出します。炎症性メディエーターは周囲の細胞の応答を惹起して炎症応答を惹起します。このようにマスト細胞は異物のセンサー役として働きます。NK細胞は細胞障害性T細胞などとは異なり(後述します)、抗原刺激による分化を必要とせず、ウイルス感染細胞やがん細胞を認識するとパーフォリンやグランザイムを分泌して認識したウイルス感染細胞やがん細胞のアポトーシス(apoptosis; 細胞の自死)を誘導する細胞です。自然リンパ球と呼ばれる細胞は様々なサイトカインなどを分泌して他の免疫細胞を活性化し、初期感染防御に働きます。このように自然免疫では様々な細胞が関与する細胞性の自然免疫機構が存在します(図 2)。
 ある種の血中タンパク質も自然免疫を担うプレイヤーです。補体は多数のタンパク質によって構成される複雑なシステムで、貪食細胞による貪食を誘導するオプソニン化や炎症誘導、異物の傷害などを担っています。そのほかにも炎症応答を誘導するメディエーターであるヒスタミンやロイコトリエン、細胞間の情報伝達を媒介するサイトカインなどが免疫応答を誘導あるいは調節しています(図 2)。

自然免疫の免疫系における位置づけ

このように自然免疫は様々な細胞や分子が複雑に関与しあって働くシステムです。自然免疫の応答は早く、感染から数時間~1日のうちに活性化されて機能します。この過程で異物の情報を獲得免疫で機能するT細胞などのリンパ球に伝える役割も担います。自然免疫は感染初期における生体防御を担うだけでなく、初期応答の中で得た異物の情報をリンパ球に伝えて、獲得免疫が効率よく応答するような働きも担っています。獲得免疫の活性化が誘導されてからは獲得免疫と密接に協調しあいながら異物排除に働きます。

図 2. 自然免疫を構成する要素

自然免疫による異物の認識

 自然免疫は異物や異常な宿主分子を認識して機能します。自然免疫は具体的に何を認識して機能するのでしょうか?病原体や傷害を受けた自己細胞から放出される分子は特徴のあるパターンを持っています。これらの分子パターンは危険シグナル(danger signal)とよばれ、自然免疫はこの危険シグナルを認識することで攻撃するべき相手を見極めています。この仕組みは非自己でありながら攻撃するべきではない存在(例えば妊婦における胎児や共生細菌など)を攻撃してしまう事態を避けるうえで重要です。この考え方は danger model と呼ばれ、Polly Matzinger によって提唱された学説です。この概念は自然免疫研究に大きな影響を与えた学説で、近年では危険シグナルに相当する分子や危険シグナルを認識する受容体が同定されているなど、実験的知見によって支持されています(図 3)。危険シグナルを認識する受容体はパターン認識受容体(pattern recognition receptor; PRR)と呼ばれ、多様な受容体が知られています(表 2)。

図 3. 自然免疫による異物の認識
パターン認識受容体(pattern recognition receptor; PRR)
細胞性因子
Toll like receptors(TLRs)樹状細胞 貪食細胞 B細胞 内皮細胞LPS、ペプチドグリカンなど
NOD 様受容体(NLRs)貪食細胞 上皮細胞などの細胞質細菌の細胞壁のペプチドグリカン 細胞内結晶(尿酸 or シリカ)、ATP、イオン濃度変化、リソソームによる傷害
RIG 様受容体(RLRs)貪食細胞などの細胞質ウイルスRNA
細胞質内 DNA センサー(CDSs)様々な細胞の細胞質細菌、ウイルスDNA
C型レクチン受容体(CLRs)貪食細胞の細胞膜微生物表面の糖鎖
スカベンジャー受容体貪食細胞の細胞膜微生物のジアシルグリセリド
N-fMet-Leu-Phe受容体※貪食細胞の細胞膜ホルミル化ペプチド
液性因子
ペントラキシン血漿微生物のホスフォリルコリンなど
コレクチン血漿糖鎖
肺胞微生物の構造
フィコリン血漿細胞壁 リポタイコ酸
補体血漿微生物表面
※N-フォルミルメチオニン・ロイシン・フェニルアラニン受容体
表 2. 危険シグナルを認識するPRR

 外来性の病原体が持つ危険シグナルは病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns; PAMPs)と呼ばれています。PAMPs の具体的な例を表 3 に示します。これらの分子は微生物やウイルスに特有にみられる配列の拡散や分子が相当する場合がほとんどです。

病原性関連分子パターン
(pathogen-associated molecular patterns; PAMPs)
核酸ssRNAウイルス
dsRNA
非メチル化 CpGウイルス・細菌
タンパク質ピリン細菌
フラジェリン
細胞壁脂質リポ多糖グラム陰性菌
リポタイコ酸グラム陽性菌
糖鎖マンナン真菌、細菌
グルカン真菌
表 3. 様々なPAMPs

 一方で自己細胞が細菌や寄生虫、ウイルスなどの病原体と出会うと傷害を受けます。したがって自己細胞が障害を受けて放出される分子は感染などの非常事態を表すシグナルとなります。このような分子は傷害関連分子パターン(damage-associated molecular patterns; DAMPs)と呼ばれています。DAMPs の具体的な例を表 4に示します。これらの分子は宿主が持つ分子でありながら普段は血中に露出することがない分子が多く含まれます。

傷害関連分子パターン
(damage-associated molecular patterns; DAMPs)
ストレス誘導性タンパク質ヒートショックタンパク質(HSP)
結晶尿酸ナトリウム
切断された細胞外マトリクスプロテオグリカンペプチド
ミトコンドリア構成成分細胞外フォルミルペプチド
アデノシン三リン酸(ATP)
核タンパク質細胞外HMGB1
ヒストン
細胞質内 ds DNA
表 4. 様々なDAMPs

サイトカインとケモカインによる細胞間コミュニケーション

自然免疫や獲得免疫が機能したり互いに連携するうえで、免疫応答を担う細胞同士が互いに情報交換し合うことは必要不可欠です。サイトカイン(cytokine)はこの情報交換を担うタンパク質で様々なものが存在しています。免疫細胞は複数のサイトカインを分泌すると同時に受け取って細胞同士が協調的に働いています。

サイトカインと類似した構造を持ち、細胞の遊走や運動を制御するものをケモカイン(chemokine)と呼ばれます。ケモカインにも様々なものが存在し、免疫細胞を制御しています。

練習問題

免疫系について正しい記述を選べ
自然免疫の構成要素に関する記述として正しいものを1つ選べ。
自然免疫による異物認識について正しい記述を1つ選べ。

 自然免疫は、病原体の侵入に対して速やかに働く、生体の初動防衛システムです。上皮や粘膜によるバリア、PAMPs・DAMPsを認識するPRR、マクロファージや好中球による貪食、NK細胞による感染細胞の排除、補体によるオプソニン化や細胞傷害などが連携して病原体を排除します。
 また、自然免疫を構成する細胞は、サイトカインやケモカインを介して情報を交換し、樹状細胞は抗原の情報をT細胞やB細胞へ伝えて獲得免疫を誘導します。したがって、自然免疫は感染初期の防御を担うだけでなく、獲得免疫を始動させる役割も担っています。
 自然免疫の全体像は、「PAMPs・DAMPsの発生→PRRによる認識→自然免疫の活性化→病原体の排除→獲得免疫の誘導」という流れで整理できます。個々の用語が曖昧になったときには、本記事の図へ戻り、国家の防衛システムとして各細胞や分子の役割を振り返ってみてください。

参考文献

  • Abbas AK, Lichtman AH, Pillai S. 分子細胞免疫学 原著第10版. 中尾篤人 監訳. 東京: エルゼビア・ジャパン; 2023. p.1–11.
  • El Chamy, L., Leclerc, V., Caldelari, I., & Reichhart, J.-M. (2008). Sensing of “danger signals” and pathogen-associated molecular patterns defines binary signaling pathways “upstream” of Toll. Nature Immunology, 9(10), 1165–1170. https://doi.org/10.1038/ni.1643
  • Matzinger, P. (2002). The danger model: a renewed sense of self. Science (New York, N.Y.), 296(5566), 301–305. https://doi.org/10.1126/science.1071059