ビタミンDは、体内のカルシウム濃度の調節に重要な役割を担っています。カルシウムは体内において「建材」のように機能します。骨芽細胞は骨形成を担い、建物の鉄骨に相当するコラーゲン繊維を形成して骨の骨格を構築します。このコラーゲン繊維上には基質物質が存在し、カルシウムが沈着する足場となります。カルシウムは骨表面でハイドロキシアパタイト結晶を形成し、コンクリートが建物に強度を与えるように、骨に機械的強度を付与します。この過程において、ビタミンDはカルシウムの取り込みを促進する「誘導員」のような役割を果たします。
 一方で、破骨細胞は骨の「解体業者」として機能します。破骨細胞は骨表面のハイドロキシアパタイトを溶解してカルシウムを遊離させるとともに、コラーゲンや基質物質を分解することで骨を吸収します。
 さらにカルシウムは、神経や細胞内シグナルの伝達に関与する重要な役割も担っています。この観点では、カルシウムは「情報」として捉えることができます。骨はこの情報を蓄えるストレージのように機能し、体内のカルシウムの貯蔵庫となっています。骨芽細胞はビタミンDの作用を受けてカルシウムを骨へ取り込み、逆に破骨細胞は骨に蓄えられたカルシウムを血中へ放出します。
 また、FGF23などのホルモンは骨芽細胞の機能を抑制することで、骨からのカルシウム動員に影響を与え、血中カルシウム濃度の調節に関与します。
 このように、カルシウムは「骨の構成要素」と「情報を媒介するシグナル」という二面性を持っています。そのため、血中カルシウム濃度は厳密に制御される必要があります。この制御に深く関与しているのがビタミンDです。本記事では、ビタミンDの役割に加えて、骨形成・骨吸収、さらに関連するホルモンによるカルシウム調節機構を、図解を中心に体系的に解説します。

ビタミンDの構造と種類

 ビタミンDには植物・真菌由来のビタミンD2と動物由来のビタミンD3があります。ビタミンD2の化学名はエルゴカルシフェロールであり、プロビタミンはエルゴステロールです。エルゴカルシフェロールはエルゴステロールが食品中で紫外線照射を受けることにより生成される物質で、ヒトの体内で合成されることはありません。ビタミンD3の化学名はコレカルシフェロールであり、プロビタミンは 7-デヒドロコレステロールです。コレカルシフェロールは 7-デヒドロコレステロールが皮膚において紫外線に暴露されることで生成されます。ビタミンD2は食品中で合成され、エルゴカルシフェロールとして摂取される一方で、ビタミンD3は体内でプロビタミンから変換されることがある点で異なっています(図 1)。
 プロビタミンの構造を見てわかるように、7-デヒドロコレステロールもエルゴステロールもコレステロールと類似した構造を持っており(実際、7-デヒドロコレステロールはコレステロール生合成の中間体です)、ビタミンDはいずれもステロール環のB環が開環しています。このことから、ビタミンDはコレステロールに構造的に類似した物質であり、脂溶性ビタミンに分類される理由が理解できます。

図 1. ビタミンDとプロビタミンDの構造

ビタミンDの吸収と代謝

ビタミンDの吸収と輸送

 外来性のビタミンDは脂溶性であるため胆汁酸の作用によってミセルを介して吸収されます。吸収されたビタミンDは脂質と同様にキロミクロンに取り込まれて肝臓へ輸送されます。一方で 7-デヒドロコレステロールは皮膚において紫外線の照射を受けてプレビタミンD3を経てコレカルシフェロールに変換され、ビタミンD結合タンパク質(Vitamin D binding protein; DBP)に結合して肝臓に輸送されます。このように外因性のビタミンDはキロミクロンにより肝臓へ輸送されますが、皮膚で産生された内因性のビタミンはDBPに結合することにより肝臓へ輸送されます。

ビタミンDの代謝

 肝臓や腎臓ではビタミンDが様々な形で水酸化を受けて循環型のビタミンDや活性化型、不活性化型へと変換されていきます。肝臓ではカルシオール-25-ヒドロキシラーゼ(CYP2R1など)の作用により25位の炭素が水酸化されてカルシジオール(25-ヒドロキシコレカルシフェロール)が生成されます。この形態のビタミンDは血流を循環しており、ビタミンDの貯蔵型でもあります。腎臓ではカルシジオールがさらに水酸化を受けます。この時、カルシジオール-24-ヒドロキシラーゼ(CYP24A1)の作用により24 位の炭素が水酸化を受けると不活性化型24,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールへ変換されます。一方でカルシジオール-1-ヒドロキシラーゼ(CYP27B1)が作用すると1α位の炭素が水酸化され、活性化型のビタミンD(1α,25-ジヒドロコレカルシフェロール)となります。この活性化型ビタミンDも24 位が水酸化されると不活性化されて不活性化型1,24,25-トリヒドロキシコレカルシフェロールになります(図 2)。

ビタミンD活性の調節と水酸化

 ビタミンDはホルモン様分子であり、シグナル伝達を仲介して体内のカルシウムとリンのバランスを整える役割を担っています。ところで、シグナル伝達には必要となった場合にシグナルを媒介する物質を産生・放出し、適切な細胞がこれを受け取ることで適正な生体反応が誘導される必要があります。ビタミンDが適正にシグナル伝達物質として機能するためには活性化型と不活性化型への変換を厳密に制御する必要があります。そこで 1α 位の炭素の水酸化を経て活性化型に変換したり 24 位の水酸化によって不活性化することでビタミンDが媒介するシグナルをコントロールしています。特に 24 位の水酸化は 1α,25-ジヒドロコレカルシフェロールが過剰な場合に誘導される反応で、過剰なビタミンD活性を抑制する役割を担っています。

図 2. ビタミンDとプロビタミンDの代謝

ビタミンDによる体内カルシウムの調節

 ビタミンDは副甲状腺ホルモンと協調的に機能して体内のカルシウムイオン(Ca2+)やリン酸のバランスを整える機能を果たしています。特にカルシウムは神経のシグナル伝達に関与する重要であり、細胞外液(細胞の周囲(組織間液と血漿)に存在する体液)中のカルシウム濃度は 9.4 mg/dL (2.4 mM) で厳密に制御されています。一方、血漿中の無機リン酸(HPO42- と H2PO4)も制御されており、二つの形態の無機リン酸(HPO42- と H2PO4)を合わせて4 mg/dL 程度でコントロールされています。
 カルシウム濃度が高濃度となる(高カルシウム血症)と神経活動が抑制され、中枢神経系の反射鈍化や消化管壁の収縮力低下などが起こります。一方で、低濃度となると(低カルシウム血症)では神経系の興奮が起こりやすくなり、テタニー(痙縮)を引き起こします。さらに、低リン血症や低カルシウム血症では骨ミネラル化を減少させるなど、体内のカルシウム濃度やリン酸濃度は生体を正常に保つうえで極めて重要です。

カルシウムとリンの吸収と調節機構

 食物中のカルシウムは一部が消化管を通じて吸収されますが、取り込まれなかったカルシウムはそのまま便中に排泄されます。また、消化液や剥がれ落ちた消化管粘膜細胞に含まれるカルシウムも便中に排泄されます。Ca2+ として取り込まれたカルシウムは細胞外液中や細胞内に一定濃度で存在し、骨にも沈着して分布することになります。骨は体内のカルシウムの大部分が分布しており、身体を支えるだけでなくカルシウムの貯蔵装置としての役割も担っています。余分なカルシウムは腎臓で濾過されて尿中に排泄されますが、一部は再吸収されます(図 3)。
 リンはカルシウムと異なり容易に吸収されます。排泄はオーバーフロー(overflow mechanism)によって制御されています。血漿リン酸濃度が 1mM を超えた場合に超えた分に比例して尿中リン酸濃度が増加します。このように腎臓は血漿リン酸濃度に応じてリン酸排泄率を変化させることで細胞外液中のリン酸濃度を制御しています。

図 3. カルシウムの吸収と排泄

骨の形成と吸収のメカニズム

骨の形成メカニズム

 骨は骨芽細胞(osteoblast)により形成され、破骨細胞(osteoclast)によって吸収されています。骨芽細胞は骨の形成に重要な役割を担う細胞で、コラーゲン繊維と基質物質を生成してリン酸とカルシウムを沈着させて骨を形成します。この過程で大量のカルシウムを取り込みますが、このことが骨を体内のカルシウム貯蔵組織としても機能させる要因となります。破骨細胞は酵素などにより骨を分解、微粒子や結晶などを貪食・分解して血中に放出します。このように骨は常に形成と吸収を行われています。
 骨芽細胞がコラーゲン分子と基質物質ground substance; 主にプロテオグリカンで形成)を生成して分泌します。コラーゲン分子は速やかに重合してコラーゲン繊維を形成します。このようにして類骨(osteoid)が形成されます。骨芽細胞は類骨内に閉じ込められてコラーゲン分子や基質物質の生成を停止させ、骨細胞(osteocyte)へ分化します。類骨が形成されるとカルシウムの沈着が開始されて最終的にヒドロキシアパタイト結晶(hydroxyapatite crystal)を形成します。このようにして骨が形成されます(図 4)。

図 4. 骨の形成

骨吸収メカニズム

 破骨細胞は貪食能を持つ多核(50 個もの核を持つ)巨細胞で、単球あるいは単球様の骨髄細胞から分化する細胞です。破骨細胞には絨毛様の突起を持っており、波状縁を形成して骨上に閉鎖空間を形成します。この領域が骨吸収領域となります。破骨細胞は細胞内のリソゾーム(lysosome)からタンパク質分解酵素を放出して基質物質を消化分解するとともにミトコンドリアや分泌小胞から放出されるクエン酸や乳酸なども放出して骨塩を溶解します。消化分解された微粒子や結晶は破骨細胞により貪食・分解されて血中に放出されます(図 5)。

図 5. 骨吸収のメカニズム

破骨細胞分化の誘導メカニズム

 破骨細胞の分化はビタミンDや副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone; PTH)によって制御されています。骨芽細胞がビタミンDやPTHの刺激を受けるとRANKリガンド(Receptor Activator for NFκ-B ligand; RANKL)M-CSF(Macrophage Colony Stimulating Factor)の発現が誘導されます。これらの分子は前破骨細胞上のRANKCD115に認識されることで前破骨細胞の破骨細胞への分化を誘導します。一方で、骨芽細胞はOPG(Osteoprotegerin)の発現が誘導される場合もあります。OPGは RANK と競合的に RANKL と相互作用することにより RANK と RANKL の結合をブロックして阻害します。この結果、OPGは前破骨細胞の破骨細胞への分化を阻害します。OPGの制御を担っている因子は明らかではありませんが、ビタミンDとPTH は RANKL の発現誘導と OPG の発現抑制によって破骨細胞の成熟を促進すると考えられています。このようにOPG-RANKL バランスは破骨細胞の成熟と骨吸収に重要な役割を担っています(図 6)。

図 6. 破骨細胞の分化誘導と抑制

体内カルシウム濃度調節

 ビタミンDは 25-ヒドロキシコレカルシフェロールとして血中に存在し循環しています。この分子ではビタミンD活性を発揮しませんが、腎臓で水酸化を受けると 1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールへと変換され、ビタミンD活性を発揮するようになります。この活性化はPTHにより促進されます。活性化型となったビタミンDは消化管におけるカルシウム吸収を促進したり、腎臓でのカルシウム再吸収とリン酸の再吸収を誘導して血清カルシウム濃度を上昇させるように作用します。一方、PTHは破骨細胞の分化を誘導して骨吸収を促進するなど骨と血中のリンとカルシウムの恒常性維持に関与します。血清中のカルシウム濃度が上昇するとカルシウム感知受容体(Calcium sensing receptor; CaSR)が Ca2+ と結合して副甲状腺によるPTHの分泌を抑制するように働きかけるとともに腎臓のカルシウム排泄を促します。このようにして上昇した血清カルシウム濃度が上昇しすぎることを防ぎます。一方で血清カルシウム濃度が低い状況下ではCaSRは副甲状腺によるPTHの発現誘導を行い、PTHとビタミンDによるカルシウム濃度調節が誘導されます。PTHと対となるホルモンにFGF23(fibroblast growth factor 23)があります。このホルモンは血清リン濃度が上昇すると発現が誘導されて骨細胞で産生され、消化管でのリンの吸収抑制と腎臓でのリンの再吸収抑制を通して血中リン酸濃度の調節を担っています。また、25-ヒドロキシコレカルシフェロールから1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールへの転換を阻害することでビタミンD活性を抑制しています。この結果 25-ヒドロキシコレカルシフェロールは 24,25-ヒドロキシカルシジオールへ変換され、不活性化型へ変換されてしまいます。このように、ビタミンDはPTHやFGF23 と協調的に機能し、体内のリンとカルシウムのバランスを調節しています。

図 7. ビタミンDとPTHによるカルシウムバランスの調節

練習問題

次のビタミンD代謝産物を、「循環するビタミンD」「活性化型ビタミンD」「不活性化型ビタミンD」に分類してください。
ドラッグ&ドロップ、またはタイルをタップして移動できます。
選択肢
循環するビタミンD
活性化型ビタミンD
不活性化型ビタミンD
ビタミンDについて正しい記述を選べ。
4つの選択肢から最も適切なものを1つ選んでください。
この図で同じ番号に対応する酵素名は共通である。図の(1)~(3)に当てはまる酵素名を答えよ。
ビタミンD代謝経路の図
先に解答欄を選び、その後タイルをタップしてください。別のタイルを選ぶと上書きできます。
選択肢
骨形成に関する記述で正しいものを選べ。
4つの選択肢から最も適切なものを1つ選んでください。
破骨細胞の分化誘導について正しいものを選べ。
4つの選択肢から最も適切なものを1つ選んでください。
破骨細胞による骨吸収機序について正しいものを選べ。
4つの選択肢から最も適切なものを1つ選んでください。

 ビタミンDは、単にカルシウムの吸収を促進する栄養素ではありません。骨形成と骨吸収、さらにはシグナル伝達に関わるカルシウムの流れ全体を統合的に制御する中心的な調節因子です。
 カルシウムは「骨の材料」として構造を支えると同時に、「情報を伝えるシグナル分子」として細胞機能を担っています。骨はそのカルシウムを蓄え、必要に応じて血中へ供給することで、体内の恒常性を維持しています。
 ビタミンDは、この骨・血中・シグナルをつなぐ流れを調整することで、カルシウムの過不足を防ぎ、生体機能を最適な状態に保っています。本記事で示した図のように、この一連の関係を“流れ”として捉えることが、ビタミンDとカルシウム代謝の理解を深める鍵となります。

参考文献

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